黒木(司会) 皆さんこんにちは。私は隣村の椎葉からやって参りました黒木勝実と申します。霧立越の歴史と自然を考える会の理事を務めております。今日は司会をやれということでございますのでどうぞよろしくお願いします。
 今日は、素晴らしい好天気でございます。農家の皆さん方には、まだ農繁期の内に入っているのではないかと存じます。そのようなご多忙の中にお繰り合わせご参加頂きましたことを厚く厚く御礼申しあげたいと存じます。
 
 さて、今日のシンポジウムについてですが、私どもの霧立越の会では過去8回それぞれのテーマでシンポジウムを開催してまいりました。今日はその9回目ということでございます。皆様方のお手元に資料を差し上げておりますが市町村合併の問題について、これは私どもの孫子の末まで大きな影響をもたらす問題でございます。霧立越の会でも只黙って見過ごす訳にはいかないということで、今回テーマに掲げておりますように「過疎山村の町村合併を考えるシンポジウム」と題しまして今日はご論議頂こうということにしたものでございます。

 幸いに私共は、以前から親しくご指導頂いております江戸川大学助教授の鈴木輝隆先生にお出いただくことができました。先生は、全国の地域づくりに関わっていただいていますし、全国の過疎山村の事情にも大変精通されていらっしゃいます。また、市町村合併につきましても関わりを深く持っていらっしゃいます。そうしたことから先生には大所高所からのご見解、そして事例なども交えて素晴らしいヒントとなるお話をして頂けるものと思っております。

 その後パネルディスカッションの形で地元の青木先生、小笠先生を交えて秋本会長のコーディネートにより5時までたっぷりと、このテーマにアプローチして参りたいと存じます。
 それでは、これから始めさして頂きます。最初に主催者であります霧立越の歴史と自然を考える会会長の秋本 治がご挨拶を申しあげます。


秋本 本日は、大変よいお天気の中ご多忙のところを私共のシンポジウムにご参加頂きまして誠にありがとうございます。
 最初にお断りしておかなければならないことがございます。実は、以前皆様方へご案内しましたシンポジウムのチラシには、パネリストにお隣、蘇陽町長の後藤様が掲載されておりました。当初ご快諾頂いていたのでございますが、その後、急な日程が入り参加できなくなったということであります。本日のパネルディスカッションに後藤町長のご参加が実現できなかったということについて深くお詫び申しあげます。
 
さて、平成17年3月を期限とする市町村合併は、今、全国の市町村に激震を与えております。総務省の発表では10月29日現在で、全国の8割以上の市町村が合併を検討しており1,200を超える市町村が法定協議会又は任意協議会を設置しているということであります。
 もし、合併に取組むということであれば、合併協議会の作業は多岐にわたっており、そのマニュアルによるとプログラムをこなすためには最低22ヶ月が必要とされております。それから逆算しますと合併の意志決定を迫られるタイムリミットは来年の5月ということになります。
 多少は遅れても期限内に立ち上げていれば拾い上げるよというようなニュアンスではありますが、いずれにしても市町村は、合併するかしないかを早急に結論づけなければならない重大な局面を迎えていることは事実であります。そして、平成17年3月を目途とする時限立法は、延長される可能性はありません。
 
こうした時期に、合併に賛成、反対と簡単に言葉では言えますが、それによって地域の将来がどう変わって行くかということについては、なかなか先が見えない、不透明であるわけです。
 市町村合併の目的は、自治能力を向上させ行政改革、財政改革を行うというものでありますが、過疎山村のように広大な山林面積を有する自治体は、財政力もなく、国からの交付金で台所を賄っている状態にあります。
 
 住民の皆さんは、合併しない方がいいというのが大方の見方でありますし、私も合併しては周辺集落の切り捨てになると思いますので、自立すべきだと思っております。しかし、このままの状態では、町の将来は大変なことになるのではないか、財政が悪化し極端に住民サービスが低下することになるのではないかという懸念もあります。

 総務省の資料によると市町村の財政力指数は、人口五千人規模で0.20、一万人規模で0.32、五万人規模で0.60、十万人規模で0.81が標準とされていますが、平成14年8月発行の本県地方課の資料によりますと、五ケ瀬町は、0.11となっており同じ五千人規模の自治体の半分近い数値です。ちなみに諸塚村0.13、椎葉村0.14、日之影町0.15、高千穂町0.23、となっており近隣町村の中で財政力指数が最も悪い状況にあります。

 また、公債費比率におきましても五ケ瀬町は17.5で、椎葉村17.1、諸塚村15.4、高千穂町12.0、日之影町10.9となっており、これも近隣町村の中で最も悪い状況にあります。
 こうした中で、平成14年度の交付金が五ケ瀬町では2億円ほど減額されました。今後も市町村合併は、合併したところには特別に優遇しますということでありますが合併しないところにはその分冷遇されるという懸念があります。

 それでは今後交付金をどれだけ減額すれば国の財政は安定するのかという明確な方針が示されておりません。したがって財政シュミレーションもなかなか描けないわけであります。そこで調べてみますと平成14年2月22日の衆議院本会議で片山総務大臣は、段階補正について述べられておりますが、それによりますと16〜17%を3ヵ年でカットするというような答弁がなされております。その先はどうなるのかといいますと全く見通しはつきません。合併しても周辺集落は厳しいことになる、合併しなくても厳しいことになる。このようなことを考えれば、短絡的に合併に賛成、反対だけでいいのかという思いがあります。今後どのようなまちづくりをすべきかという問題であります。

 また、合併による優遇策としては、合併特例債や特別交付税措置があります。その金額は実に大きなものでありまして、このことについて詳しいことは、本日受付に準備しております「かわら版『風』」に掲載しておりますが、その要約したものがお手元の資料でございます。

 ちなみに西臼杵3町が合併した場合人口は26,367人で特例債は129.3億円、住民一人当りでは490,386円。フォレストピア圏域5町村合併の場合人口32,538人となり、特例債は193.5億円、住民一人当りでは594,689円。五ケ瀬町、椎葉村、蘇陽町、清和村の場合、人口16,795人となり、特例債は123.2億円、住民一人当りでは733,552円。西臼杵3町と椎葉村、諸塚村、蘇陽町、清和村の場合、人口40,485人となり、特例債は123.2億円、住民一人当りでは639,990円。などとなり、どこと合併するかによって使えるお金も違って参ります。こうして見ると特例債では五ケ瀬町、椎葉村、蘇陽町、清和村が一番率がよく、西臼杵3町合併が一番割りの合わないことになります。また、優遇措置は、合併特例債の他に特別交付税措置もあります。喉から手の出るようなお話しではあります。

 一斉に雪崩現象が起きて合併へ走るのではないかといわれる所以です。そして、日本国中合併特需が起きて、経済が活性化し景気の回復につながるという発想もうなずけます。
 合併問題は、このようにまだ私たちに見えない部分が非常に多いわけで、判断や考え方について材料が乏しいわけであります。本日の講師の江戸川大学の鈴木輝隆先生はこの点非常に造詣が深い、時代を読まれる方であります。見えない部分やこれからのまちづくりの考え方について大きなヒント与えてくださるものと思います。

 鈴木先生には、本当にご多忙のところを私たちのためにかけつけてくださいましてまことにありがとうございます。11時30分に空港に到着されそのままこの会場に只今到着されたばかりでお疲れでありますがよろしくお願いします。会場からも是非積極的な質問をして頂いて実り多いフォーラムにしていただければ幸いでございます。よろしくお願いします。

黒木 それではさっそく基調講演に入らせていただきます。演題は「過疎山村における市町村合併の課題と展望」ということで先ほどご紹介申し上げました江戸川大学社会学部経営社会学科助教授の鈴木輝隆先生にご講演をお願いします。ご講演のレジュメや鈴木先生のプロフィール等はお手元の資料にございますので省略させていただきますが、鈴木先生は、第6回の霧立越シンポジウムにもご指導いただいておりますので皆さんもお馴染みかと存じますが全国の地域づくりをご指導いただいておりますので今日はどういうお話が伺えるか大変楽しみにしているところであります。それでは先生、ご到着早々で恐縮でありますが1時間ほどご講演頂きたいと思います。よろしくお願いします。