第9回・霧立越シンポジウム

過疎山村の町村合併を考える


平成14年11月22日(金) 五ケ瀬町町民センター

趣旨及日程

 平成17年度に向けた市町村合併問題は、その意思決定を迫られるタイムリミットがまさに秒読みの段階で近づいてまいりました。これまで各地で議論されている経緯をみますと広範な面積を有する過疎山村地域についての議論や情報は非常に少ないような気がしているところです。
 そこで、江戸川大学の鈴木輝隆先生をお招きして過疎山村の合併についてその論点や考え方を学ぶシンポジウムを開催したいと思います。
 
 鈴木輝隆先生は、全国各地の地域づくりにかかわり、山村の町村合併問題については多くの情報と視座をお持ちの方です。合併をしない方針で動き始めた日本上流文化圏研究所の山梨県早川町。合併方針で動き始めたじょんのびの里の新潟県高柳町。こうしたそれぞれの過疎山村の明日を読んだ先進地の戦略について学び、私たちの郷土のあり方や合併についての考え方を講演とパネルディスカッションで深めていきたいと思います。

日程  11月22日(金)13:30〜17:00
場所  五ケ瀬町町民センター

〇基調講演 13:30〜14:30
テーマ 過疎山村における市町村合併の課題と展望
―新たな山村の役割を考える―
 講師 鈴木輝隆先生 (江戸川大学助教授)

〇パネルディスカッション 14:40〜16:40
―過疎山村の町村合併を考える―
・パネリスト
 鈴木輝隆氏(江戸川大学助教授)
 青木一義氏(鞍岡・農業)
 小笠まゆみ氏(三ヶ所・小笠園)
・コーディネーター
 秋本 治(霧立越の歴史と自然を考える会会長)
・総合司会
 黒木勝実(霧立越の歴史と自然を考える会理事)

主催   過疎山村の町村合併を考えるシンポジウム実行委員会
      霧立越の歴史と自然を考える会

後援 五ケ瀬町




[基調講演レジュメ]

「過疎山村における市町村合併の課題と展望」

江戸川大学社会学部経営社会学科 助教授 鈴木輝隆

新たな価値観を持った時代、市町村合併の時代を生き抜くために、地域は何を考え、何をすべきであるか。
「昭和の大合併の時代には、旧町村単位の地域自治、「小さな自治」の基盤がおおかた失われ、周辺地域の衰退を招いた。
消滅の危機に瀕する町村が生き延びるためには、自らが存在する意義と、いかに活気のある「住民自治と地域経営」を創出できるかにかかっている。
自分たちの地域の生活や歴史・文化、風景をどのように残していくか、そのターニングポイントの年。

時代意識をしっかり把握し、住民自治を基本に地域にしっかり根づいた地域経営の仕組みを確立することがポイント。

■時代意識は、
@住民主体の地域経営の仕組みと行政の地域経営の支援を条例等で定める時代。
Aコスト意識をもって、きめ細かい、活力があって温かい、「新しい公共」を創造する時代。
B住民のやる気が地域の行く末を左右する、リスクもある地域主権の時代。

■住民自治からの地域経営は、
@地域の歴史や伝統、生活文化を尊重し、住民自らの創造伝承を保障する。
A住民自治組織の育成と相互扶助による生活基盤整備の財源を保障する。
B住民の生産・経済活動を活性化するための基盤整備と活動助成を保障する。
C合併後、旧役場に行政の地域振興部局を設置し、助役に準じた職員の配置を保障する。
D地域振興部局長は、公選あるいは住民の代表者とすることを保障する。
E地域計画など地域の行く末を決める計画や政策は、住民集会などに図ることを保障する。
F合併後、地域別選挙区で、一定割合の議会議員が選出できるように保障する。
G住民自治の育成のために、県や市町村の事務委譲を進め、地域の自治創造を保障する。

■これから何が起きるか。
@大都市戦略と農山村への共感と対流(日本列島総都市化への反省)
A自治体の財政基盤の拡充と自治能力の創意工夫
B都道府県から市町村への事務委譲と自治創造(政令指定都市、中核市、特例市)
C個性ある地域への挑戦(魅力的なライフスタイル)
D多様な主体による行政サービスの分権
E市町村合併に向けて、コンサルタントの仕事の集中
F合併特例法による公共事業特需の発生(財源問題の発生)
G議員の選び方の変化と議会の混乱
H行政組織の仕組みと人事の混乱
I合併になだれ現象か、慎重論か(経済状況とマスコミ動向に注視)
J文化圏合併と経済圏合併

■事例研究と考察
@合併しない早川町における取り組み
A合併方向の高柳町における取り組み
B21世紀の過疎山村のあり方を模索する(野沢温泉村野沢組)
(循環型社会、環境と文化−自立、共生、創造、多様な主体と中間セクター)
C市町村合併の枠組み論にとらわれ浮き足立たず、住民の暮らしのあり方から考える。
D時代に素直になり、同時代を生きるものが共感できる社会を構築する。