アイスバーンのドライブテクニック

 五ケ瀬ハイランドスキー場は、標高1684mの向坂山山頂近くに位置するため、標高1300mのカシバル峠まで急坂道を車で登らなければなりません。このため積雪時には、よくスリップ事故が発生しています。日本最南端のスキー場ですから、雪道走行に馴れない車が多いのは、いたし方ないことですが、せっかくの楽しいスキーが事故となっては台無しです。いつもハラハラしながらスキーヤーの運転ぶりを見ています。前輪駆動の車に後輪にタイヤチェーンを装着している車を見かけることさえあります。ここでは、アイスバーンのドライブテクニックを掲載しますので参考にされてください。

1.滑る雪と滑らない雪をしっかり見極めましょう。
 アイスバーンで一番怖いのは、比較的気温の高い時に降るボタン雪で、うっすらと路面を覆った新雪が一番滑ります。外気温が零下10℃以下に下がると雪は滑りにくくなりますが、プラスの気温の時の新雪はとても滑ります。坂道の路面では人が立って歩くこともできないほどです。また、晴れた日に法面の雪が溶けて路面に流れ出し、深夜に凍ったアイスバーンも怖いです。濡れたように見えますので凍っていることがわからない場合があり、要注意です。まるでスケートリンクのようになっています。このような時は、4駆にタイヤチェーン装着車でもノーマルタイヤと同じ位滑ります。万全な装備と過信すると大きな事故につながります。

2.雪上でブレーキテストをしましょう。
 スキーヤーは、雪温や雪の種類によって滑りが違うことをご存知ですね。同様に車も雪温や雪の種類によってスリップの仕方が違います。
 走行中、路面に雪が見え始めたら、その雪の滑り具合を確認するためブレーキテストを行ないましょう。前方・後方に車がいないことを確認し、スリップしても安全な場所を選び、雪面の上で急ブレーキをかけてみます。するとその雪の滑り加減を確かめることが出来ます。これによって、その滑り加減を全身にインプットしてから運転しましょう。
 路面は、雪が消えて舗装が露出している部分、てかてかとしたアイスバーンの部分、わだちの跡の無い新雪部分など連続して続いています。この中で、ブレーキや加速をかけるのは舗装が見える部分、次いで新雪部分です。てかてかとしたアイスバーンでは、慣性に任せて何もしてはいけません。ポイントを見極めながら路面を選んでブレーキやハンドル操作を行ないましょう。
 ハンドル操作中スリップはじめたら、ブレーキとハンドルから手を放すと正常な走行をはじめます。その後、路肩の深雪の中や滑りにくい雪面の上、舗装の露出している面を捉えてからブレーキ、ハンドル、アクセルの操作を行ない態勢を立て直します。
 いずれにしても、よく滑る雪面と滑りにくい雪面を見分けながら走行し、滑る雪面ではハンドルやブレーキ操作はしないで、滑りにくい雪面を拾いながらその上で操作しましょう。肩の力を抜いて、フロントに水を入れたコップを据えているつもりで運転することです。

3.急坂路のエンジンブレーキ過信
 急坂路を下る時は、一般的にはエンジンブレーキを使用しますが、エンジンブレーキも使い方しだいでは、フットブレーキよりスリップし易いのです。特にギア比の低いローやセカンドギアのエンジンブレーキでは急ブレーキと同じ現象が生じます。分かりきったことですが、フットブレーキは4輪にブレーキがかかり、エンジンブレーキでは2輪にしかブレーキがかかりません。(4駆は例外)その上ギア比が低いと摩擦の抵抗が増えて急ブレーキと同じ現象が生じます。特に、ギアをチェンジしたその瞬間が要注意です。
 一番よい方法は、3速のエンジンブレーキとフットブレーキを併用することです。低速ギアであまりにもゆっくりしたスピードだと、突然にタイヤがロックされたようになって滑り出します。その場合は、少しアクセルに足を乗せて軽くスピードを上げてやるとスリップは止まります。

4.上り坂のテクニック
 坂道をあまりにものろのろしたスピードで上がるために、かえってスリップして登れなくなった車をよく見かけます。登り坂では、あまりにもゆっくりとした走行はスリップの元になります。滑りにくそうな雪面や雪の無い路面を拾ってアクセルを踏み、てかてかのアイスバーン上はその惰力で上がります。ちょっと早いかなというくらいの一定のスピードとリズムが大切です。その場合も低速ギア―だと滑りを誘発します。特に低速ギアでアクセルをいっぱい踏み込みますと間違い無くスリップして登れなくなります。
 
5.タイヤチェーン
 急な上り坂では、ゴムやプラスチック系統の高級タイヤチェーンは効果がありません。アクセルを踏んだ時、チェーンの内側のタイヤだけが空転して横滑りし、やがてチェーンは外れてしまいます。スキー場などの急坂路では、そんなトラブルをよく見かけます。一番安い金属のタイヤチェーンが最良です。
 タイヤチェーンの装着にはいろいろな方法があり、ここでは詳しく述べませんが、ポイントは装着したチェーンをホイール側で引っ張るゴム又はスプリングの強さ加減です。このスプリングを偏らず均等に強く張っておけばチェーンは外れません。

6.スタットレスタイヤ
 タイヤも近年はスタットレスタイヤがすごく良くなりました。以前のスノータイヤとは比較にならないほど雪面を強力に捉えます。筆者は、冬は毎日のように4駆で雪の中を走行していますが、ここ数年スタットレスタイヤのおかげでタイヤチェーンを装着したことがありません。北海道などの北国では皆さんチェーンなしで高速走行しています。これは、雪温が低いたことと、4輪駆動車にスタットレスタイヤ装着のためです。雪道を走る機会の多い方は、スタットレスタイヤを購入されることをお勧めします。

 昭和50年代からスキー場調査では、冬季は毎日のように除雪もされていない過酷なアイスバーンを車でスキー場予定地まで登っていました。また、信州や東北、北海道等にスキーに出かける時も大抵レンタカーを利用してアイスバーンの高速道路などを走ります。カナダのカリガリーからジャスパーまでもレンタカーで走ってみました。特にバンフからのアイスフィールドパークウェイは凄いアイスバーンです。現地では、皆さん時速100kmほどで走っていますよ。
 こうした体験を通して会得したものをアイスバーンのテクニックとして書き記しました。是非参考にして頂き、このスキーシーズンは、事故のない素敵なスキーライフになることをお祈りしています。
 
2000年12月2日
秋本 治